原因と要因の違いを解説!間違えるとKPIの設定ができなくなる?
- CSF
企業がKGI(重要目標達成指標)を達成するために必要となるのは、各社員に適切なKPI(重要業績評価指標)を設定することです。
そして、KPIを設定するためには、CSF(重要成功要因)から紐解いていく必要があります。
しかし、「要因」と「原因」の違いをしっかりとわかっていない方も多いのではないでしょうか。
今回は、「要因」と「原因」の違いについて解説しますので、CSFを導き出す時に頭の片隅に入れておいてください。
「要因」と「原因」、単なる言葉の違いかと思っていると部下との軋轢が生じたり、KPIの設定を間違えることによるKGIの方向性を見失う危険性があります。
関連記事:KPI(重要業績評価指標)とは?KGI・CSF(KSF)との違いや意味・設定方法を解説
INDEX
原因と要因の違い
結論から申しますと、原因と要因の違いは、とある物事が起こった時に「原因」は単一の直接の理由を示す場合に使われ、「要因」は複数の原因になり得る可能性のあった要素の集まりを指す場合に使われるという違いがあります。
このことに準じて、「要因」は「間接的な、原因になり得た要素の集合」といった意味合いもあります。
「多くの原因となり得る要素が重なって要因が生成され、その中から単一の原因により、物事が起こる」というイメージです。
また、一般的には、原因はネガティブな要素で使用され、要因はどちらも使用できることも違いとして挙げられますが、ビジネス用語としてはポジティブ要素なのかネガティブ要素なのかはあまり関係はありません。
英語でのニュアンスで考える
原因は、英語では“cause”となり、他の和訳の意味には「起因」「事由」「動機」などがあります。
要因は、英語では“factor”となり、他の和訳の意味には「因子」「因数」などがあります。
結果との関係性で考える
原因も要因も対義語は「結果」ですが、原因と結果には直接の因果関係があり、要因と結果にあるのは相関関係です。
関連記事:要因分析とは?要因解析とは違う?正しい手法で課題を解決
原因と要因の違いを表す例
上記の説明で「わかったようなわからないような」という方が多いかと思われますので、具体例を挙げて考えてみましょう。
例1. 商品がすぐに故障した
原因としては、「部品の劣化」「製造過程でのミス」などが考えられます。
ヒアリングや調査で「なぜ起こったのか」を明らかにして、故障に繋がった要素として、最も直接的な関係のあるものが「原因」です。
ここから先は「原因」ではなく「要因」を探るために必要なことです。
「部品の劣化」が原因だとしましょう。
さらに、「なぜ劣化した部品を使っていたか」を調査します。
「チェック体制が形骸化していた」「注意力が散漫になっていた」などが挙げられると思います。
そこでさらに「なぜチェック体制が形骸化していたのか」「なぜ注意力が散漫になっていたか」と、「なぜなぜ」を繰り返していくうちに課題が見えてきます。
この場合は原因は「部品の劣化」、要因は「チェック体制が形骸化していた」「注意力が散漫になっていた」などになります。
「なぜなぜ」を繰り返していくうちに要因はもっと見つかるはずです。
例2. お客様を怒らせてしまった
このような場合も、原因と要因を分けて考えることが可能です。
原因は、「失礼な態度をとった」「商品の説明が不十分だった」などが考えられますが、最も直接的な関係のあるものが「原因」です。
「商品の説明が不十分だった」ことを原因と仮定して、要因を探っていきます。
先ほどと同じようにここからは原因ではなく要因を探る手法となります。
なぜ「商品の説明が不十分だった」のかを調査し、要因を考えていきます。
例えば「商品知識が充分になかった」などが挙げられます。
それに対し、「なぜ商品知識がなかったのか」を問いますと今度は、「勉強する風潮がなかった」などさらなる要因が出てきます。
またさらに、「なぜ勉強する風潮がなかったのか」を問いていきますと要因がたくさん見つかるだけでなく、最終的に真の要因(真因とも言ったりします)も発見できたりします。
なぜなぜ分析
上記の例で言えば、両方とも「なぜ起こったのか」を何度も考えています。
このような手法のことを「なぜなぜ分析」といい、自動車メーカーのトヨタの生産方式で用いられていることでも有名です。
トヨタでは「5回なぜを繰り返す」と言いますが、5回にこだわる必要はなく、要因がある程度出揃ったり、最終的な真の要因を突き止めることができれば構いません。
「なぜ起こったのか」を追求すること、関係者に改めて考えてもらうことが目的であって、問い詰めることが目的ではないからです。
逆に5回では足りないケースもあるので、回数にこだわりすぎてはいけませんが、本質を突き止めるのに役立つ分析手法ですので、CSFの算出からKPIを設定するのにも役立ちます。
関連記事:KPIの設定におけるCSFの意味・役割とは?KGIを達成する手法も紹介
CSFの設定に必要なのは原因ではなく要因
CSFは「重要成功要因」と言われるように、要因であることが求められます。
成功したことの要因を探り、最も重要なものをCSFと言いますが、要因ではなく原因を考えてしまうと局所的な目標にしかなりません。
例えば、前期に成功した事例が「ブランド認知度の向上」だとします。
原因が「SNSを使った認知拡大に成功した」ことだった場合、要因を考えなければSNSを使っていた広報担当者がすごいだけで、他の人は関係なくなってしまいます。
CSFを元にKPIを設定しなければならないので「他部署にはKPIがない」という明らかにおかしい状態になります。
そこで、原因である「SNSを使った認知拡大に成功した」のはなぜか考えてみます。
「商品のアピールができるほど商品知識があったから」
それはなぜか?
「商品知識を製造過程の人だけでなく、社員全員が持っていたから」
それはなぜか?
「商品知識を共有できるような環境が整っていたから」
それはなぜか?
「商品開発に関するこだわりを語る場があったから」
ここまでいくとCSFは「こだわりのある商品力」であることとなります。
そこからKPIを導き出していくと、各部署に割り当てが可能になります。
- 広報やマーケティングチームには「1日1回以上の商品訴求の施策を行うこと」
- 営業部門では「訪問先で必ず1回は商品の魅力を説明すること」
- マネジメントサイドでは「月に1回商品説明会を継続してセッティングすること」
- 開発や製造では「商品のこだわりポイントが損なわれるミスを0.1%以下にすること」
など、最初の「SNSがうまくいきました」だけでは終わらない会社全体のミッションとすることができ、各部署ごとのKPIを設定できたので、より強固な商品力を生み出すことができるでしょう。
関連記事:KPI(重要業績指標)の重要性とは?効果的な指標設定のポイント
数理論理を使った証明
「たまたまうまくいく例を挙げただけではないのか」という可能性もありますので、数理論理学的に証明をしてみます。
KPIが数値化できるものでなければならないものなので数学的な考えが必要です。
要因の定義に立ち戻ると、CSFが重要成功要因というように、要因はKGI達成のために必要な要素であると言えます。
要因は原因の集合であるため、原因は要因の部分集合と考えることができます。
要因をF、原因をCとおくと、C⊂Fです。
そうすると、「原因であれば要因である」つまり、“C⇒F”ということが成り立ちます。
同時に、「要因でないならば、原因ではない」“¬F⇒¬C”も成り立ちます。
KGI達成のための要素になりうる要素をxとおくと、要因も原因もxの集合と捉えることができ、任意のxに対し、x∈F、x∈C と記述することができます。
仮にここで逆説的に「原因であれば要因ではない」“C⇒¬F”と仮定すると、「要因であれば原因ではない」“F⇒¬C”も成り立つことになります。
要因はKGIの設定のためにも達成のためにも必要なものです。
上記のように「原因であれば要因でない(“C⇒¬F”)」を正とするならば、「要因であれば原因ではない(“F⇒¬C”)」が成り立つため、原因はKGIに影響しない、x∉Cと言えてしまいます。
ここで原因の定義に立ち戻ると、KGI達成のために起こる物事に最も大きな影響を与えた要素なので、x∈Cです。
そうすると、「原因はKGIに影響する」「原因はKGIに影響しない」が同時に成り立つ(x∈C∧x∉C)ため、矛盾が生じます。
全ての要素xにおいて「原因である」または「原因でない」“∀x;C ∨ ¬C”は成り立つものと考えられるので、背理法により、原因は要因の部分集合である(“C⇒F”)と言えます。
(厳密に言えば排中律が成り立つかどうかは怪しい部分もあり、そのことがCSFの特定を難しくしているケースもあります)
このことが正しいと証明されたので、やはり過去の成功の原因を追求し、要因を洗い出し、それからCSFを特定でき、そのCSFに沿ったKPIの設定が重要なのです。
このように、迷ったらざっくりでいいので集合論的な考えをするとCSFの特定もKPIの設定もしやすくなるでしょう。
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