PDCAサイクルは古い!時代遅れ!KPI設定の代わりになるものはOODA(ウーダ)ループ?
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近年、PDCAサイクルはビジネスやプロジェクト管理の分野で非常に一般的なアプローチとなっていて、KGIやKPIの設定にも使われています。
しかし、AIがある程度のクオリティの作業を行えるようになったり、より変化に急速に対応する必要のある昨今では、PDCAサイクルは古く、うんざりするほど使われている上に遅すぎるとも言われています。
今回は、PDCAサイクルより迅速かつ効果的に改善ができるアプローチについて解説しますので、ぜひご参考になさってください。
また、今回は、PDCAサイクルの代わりになるものは何なのか、新しいアプローチをご紹介します。候補はいくつかあるので、ご自身の会社に合いそうなものを選ぶヒントになれば幸いです。
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INDEX
PDCAサイクルのおさらい
まず、PDCAサイクルについて簡単におさらいしましょう。
PDCAサイクルは、計画(Plan)、実行(Do)、チェック(Check)、行動(Action)の4つのステップから成り立っています。
PDCAサイクルは問題解決や改善に役立ち、多くの組織で採用されているプロセスですが、このステップは近年の社会の動きの速さに間に合わない時もかなり頻繁に見かけます。
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KPI設定におけるPDCAサイクルの問題点
PDCAサイクルは一般的に有用であると考えられていますが、現在では次のような問題点が指摘されています。
柔軟性がない
PDCAサイクルでは、計画を立て、実行し、チェックし、行動するという一連のステップを忠実に守る必要があります。
これではサイクルが1周する間にそもそもの計画が適切ではなくなるほど時代の流れが早い近年では、柔軟性が求められます。
そのため、目標となるKPIの設定にPDCAサイクルを使うのは適しておらず、KPIが目標として適切かどうかの判断材料にはなりにくくなっています。
そのためにOKRという手法が用いられたりしようという試みがありますが、KPIすら扱えないようであれば、OKRのスピード感や柔軟性に対処することは難しいと言わざるを得ません。
関連記事:OKRとは?KPIとの違いやMBOも解説|知識や意味を理解して目標達成を
過度な文書化
PDCAサイクルでは、計画やチェックの段階で多くの文書化が必要となりがちですが、時間とリソースが無駄に消費されることがあります。
KPIあるいはKGIの達成が本来の目標であるはずなのに、目標設定が目標となってしまう可能性すらあります。
これでは、そもそも全てが無駄となってしまいます。
効果の不確実性
PDCAサイクルを実施しても、必ずしも問題の解決やプロセスの改善が保証されるわけではありません。
効果が不確実な場合、組織では時間と労力が無駄になる可能性も多くありますが、それでもなおPDCAサイクルに固執してしまうように思えます。
KPIが不適切だと判断した時点で別の目標設定が大切となりますが、PDCAをベースにしている以上、なかなか動けないのが現状としてあります。
効果がないと判断するのもPDCAサイクルの役割の一つですが、効果がないとわかった時点で変化ができないという点でやはり不確実で遅いと思われています。
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PDCAサイクルの代わりになるもの
PDCAサイクルの代わりになるものとして、以下のようなものが考えられます。
アジャイル
アジャイルは、プロジェクトの柔軟性と進化に焦点を当てた手法で、PDCAサイクルと同様に継続的な改善を追求しますが、より柔軟で反応性のある手法です。
従来は、最初に計画立案(PDCAサイクルにおけるP)を行い、そのうえで設計・実装・テスト(PDCAサイクルにおけるDCA)を行うという流れが一般的でした。
しかし、この手法では、計画立案中に目標が変更となり、開発期間が長くなるというデメリットがありました。
アジャイル開発では、まず要求・要件を小単位に分割し、その単位ごとに実装とテストを繰り返します。この繰り返しを「スプリント」と呼び、一般的に1週間から4週間程度の期間で行われます。
スプリントが終了するごとに、顧客やユーザーに成果を提示し、フィードバックを得ることで、要求・要件の変更にも柔軟に対応することができます。
アジャイルのメリット
アジャイルのメリットは、以下のとおりです。
- 開発期間の短縮
- 計画変更への柔軟な対応ができる
アジャイルのデメリット
アジャイルのデメリットは、以下のとおりです。
- 経験やスキルがないとうまく進められない
- コミュニケーションや調整が重要
経験やスキルは確かに必要ですが、経験を積めば良いだけです。
また、コミュニケーションも双方向コミュニケーションができれば解決する課題です。
アジャイルは時代遅れではない
「アジャイルは時代遅れ」という意見もありますが、先述の通りコミュニケーションの手法に問題があるだけです。
アジャイル開発の代わりになるものとしてウォーターフォールがありますが、各段階の定義づけに時間がかかるため、結局PDCAサイクルと同じ結末になってしまいます。
アジャイルのデメリットは、双方向コミュニケーションができるだけで対処することができるので、間違っても報連相などといった形式ばったコミュニケーションをしないようにしましょう。
報連相が悪いわけではなく、コミュニケーションという自由なものを型にはめようとしているのがよくないです。
関連記事:報連相は古い!時代遅れ!日本だけ!本当の意味でなければ必要ない!
リーンシックスシグマ
リーンシックスシグマとは、ムダとムラを排除して業務効率化を図ることです。
リーンシックスシグマでは、マーケティング用語である「データドリブン」という、情報を可視化して定性的な部分も可能な限り数値化し、数字を業務改善や課題解決の根拠とする点が特徴です。
リーンシックスシグマは、「リーン」と「シックスシグマ(6σ)」に分かれています。
- リーン:ムダを排除して効率を向上させるための手法
- シックスシグマ:品質を向上させるための手法
リーンとは
リーンとは、リーン生産方式とも呼ばれ、まず業務プロセスを可視化し、ムリ、ムダ、ムラを特定します。
次に、ムリ、ムダ、ムラを排除するための改善策を立案し、実行します。
最後に、改善策の効果を評価します。まずムリ、ムラ、ムダをなくすのがリーン生産方式の特徴です。
シックスシグマ(6σ)とは
シックスシグマの語源となったシグマ(σ)は、データの散らばり具合、つまり標準偏差を指す単位からきています。
元々は製品の完成度が平均値に対して、どの程度の分散があるかを表していました。
シックスシグマとは「6σ」のことであり、100万回のうち不具合が3~4回を超えないことを目標としていましたが、現在では製造業以外にも派生しており、そこまで厳密な使われ方をすることは少ないようです。
リーンシックスシグマのメリット
リーンシックスシグマのメリットには以下のようなものがあります。
- 業務効率の向上
- 品質の向上
- コストの削減
リーンシックスシグマのデメリット
リーンシックスシグマのデメリットは、以下のとおりです。
- 導入までに時間とコストがかかる
- 専門的な知識やスキルが必要
- 組織全体の取り組みが必要
「導入までに時間とコストがかかる」というのは、データが揃うまでに時間がかかってしまうという意味で、データ収集がすでにうまくいっているのであれば問題はありません。
OODAループ(ウーダループ)
OODAループとは、アメリカの空軍大佐ジョン・ボイドが提唱した、状況判断・意思決定・行動を繰り返すフレームワークです。
OODAループは、以下の4つのステップで構成されています。
- 観察(Observe):状況を観察し、必要な情報を収集する。
- 方向づけ(Orient):状況を理解し、目標を設定する。
- 意思決定(Decide):目標を達成するための行動を決定する。
- 行動(Act):決定した行動を実行する。
一見するとPDCAサイクルより遅く見えるかもしれませんが、PDCAが各ステップを真面目すぎるほどに踏んでいるのに対して、OODAループは常にOODAの4つを意識しており、ものすごくシンプルに言えば、観察しながら行動するといったイメージです。
OODAループは、刻一刻と変化する状況に対応する時に有効です。
観察・方向づけ・意思決定・行動の各ステップを迅速に繰り返すことで、常に最適な判断を下すことができるとされています。
元々が空戦での考え方なだけに、状況に応じた行動を行う必要があるためこのような考え方が誕生しました。
OODAループのメリット
OODAループのメリットは、以下のとおりです。
- 変化の激しい状況に対応できる
- 迅速な意思決定が可能
- 状況に応じた柔軟な対応が可能
OODAループのデメリット
OODAループのデメリットは、以下のとおりです。
- 経験やスキルが必要
- 組織の文化や風土が適していないとうまく機能しない
状況を正確に把握し、迅速な意思決定を行うことで、より良い結果を導き出すことができますが、デメリットとして挙げた2つは新入社員に課すと少し負担になるかもしれません。
PDRサイクル
PDRサイクルとは、
- Prep(準備)
- Do(実行)
- Review(見直し)
の3つのステップから構成されるサイクルです。
PDCAサイクルのPである、計画(Plan)ではなくPrep(準備)となっており、3段階のステップである分、PDCAサイクルよりもスピーディーにサイクルを回すことができます。
PDRサイクルは、環境の変化が激しい現代において、迅速な意思決定や対応が求められる場面で活用されています。
PDRサイクルでは以下のステップを並行しながら行うイメージです。
- Prep(準備)
- 何を改善するか、その理由や目的を考える
- 実行に必要な情報やリソースを準備する
- Do(実行)
- 準備した内容を実行する
- Review(見直し)
- 実行した結果を分析し、改善点を検討する
PDRサイクルのメリット
PDRサイクルを活用することで、以下のメリットがであります。
- スピーディーな意思決定・対応が可能になる
- 改善サイクルを短縮できる
- 仮説検証を繰り返し、より良い結果を導き出せる
PDRサイクルのデメリット
PDRサイクルは、スピーディーなサイクルを回すことを重視した手法です。
そのため、以下のようなデメリットがある点に注意が必要です。
- 実行する内容が明確で、実行に必要な情報が十分に揃っていることを確認する
- 見直しの段階で、改善点を的確に検討し、実行に反映させる
PDRサイクルは、PDCAサイクルよりも簡潔な手法ですが、適切に活用することで、さまざまな場面で成果を上げることができます。
どのアプローチを選ぶべきか?
PDCAサイクルの代わりになるアプローチを選ぶ際には、具体的な状況や組織のニーズに応じて選択する必要があります。
以下のガイドラインが役立つかもしれません。
プロジェクトの性格
プロジェクトが革新的で柔軟性が求められる場合、アジャイル開発が適しています。
一方、プロセスの効率化が焦点ならばリーンシックスシグマが選択肢として考えられます。
ユーザー関与
ユーザーのニーズやフィードバックを積極的に取り入れたい場合、アジャイル開発やOODAループが役立つでしょう。顧客中心のアプローチで問題を解決できます。
データの可用性
データに基づく意思決定が重要な場合、リーンシックスシグマやOODAループが適しています。
データを収集し、分析して改善に活かすことができます。
PDCAサイクルは日本だけ?
PDCAサイクルは、日本では定着しています。
しかし、海外ではPDCAサイクルという用語はもうあまり使われておらず、知らない方もいらっしゃるようです。
これには以下のような理由が考えられます。
海外ではPDCAサイクル以外の手法が主流になっている
PDCAサイクルは、1950年代にアメリカで提唱された手法です。
しかし、その後のビジネス環境や社会の変化に伴い、海外ではPDCAサイクル以外の手法が主流になってきています。
特に環境の変化が激しい現代においては、スピーディーな意思決定や対応が求められるため、PDCAサイクルよりもスピーディーなサイクルを回すことを重視した手法が注目されています。
日本ではPDCAサイクルが浸透しすぎている
日本では、PDCAサイクルが製造業を中心とした企業で広く浸透しています。
また、教育現場でもPDCAサイクルが取り入れられており、学生時代にPDCAサイクルを学ぶ機会も多いです。
そのため、日本ではPDCAサイクルが当たり前のように使われており、海外とは感覚が異なると考えられます。
もちろん、日本でもPDCAサイクル以外の手法が用いられているケースはありますが、全体的に見るとPDCAサイクルが主流であることは間違いありません。
そのため、海外から見ると、日本はPDCAサイクルに固執しているように見えるのかもしれません。
日本国内外を問わずPDCAジョークすら生まれている
こういった実態から、PDCAはディスられ放題です。
いかに滑稽に見られているのか一例を挙げて紹介します。
※念の為再度記述しますが、一応「計画(Plan)、実行(Do)、チェック(Check)、行動(Action)」が正解です。
- Plan(計画)
- do(実行)
- Check(チェック)
- action(行動)
横に並べると「PdCaサイクル」となり、最も綺麗に表現しているモデルです。
「PとCにウェイトをかけすぎている」ということが一目でわかる秀逸な例です。
ただし、残念ながら口頭では伝わりづらいというデメリットがあります。
- Plan(計画)
- Delay(遅延)
- Cancel(中止)
- Apologize(謝罪)
よくあるのはこちらのパターンではないでしょうか。
こちらの進化系として、Pを「Procrastinate(先延ばしにする)」とするモデルもあります。
- Plan(計画)
- Disaster(惨事)
- Chaos(混沌)
- Attack(批難)
だんだん見てられなくなってきますのでこの辺にしておきますが、このような現象が起こっていますという一例でした。あくまで一例です。
OODA(ウーダ)ループが最もおすすめな理由
4つの新たな手法を紹介しましたが、OODAループが最も適していると考えられます。
もちろん、業種や現場によりますが、OODAループのいいところは、以下のとおりです。
環境の変化への迅速な対応が可能
OODAループは、観察・判断・意思決定・行動の4つのステップを高速で繰り返すことで、環境の変化に迅速に対応することができます。
そのため、変化が激しいビジネス環境において、目標が適切かどうかの判断から切り替えのスパンが短く、有効な手法です。
最適解を追求する必要がない
OODAループでは、最適解を追求するのではなく、仮説を立てて検証しながら、最適解に近づいていくという考え方に基づいています。
そのため、時間やリソースを無駄にすることなく、効率的にKPI設定をすることができます。
組織の意思決定力を向上させる
OODAループは、個々の裁量権を拡大することで、組織の意思決定力を向上させることができます。
そのため、「KPIではないから行動しない」をいうのは認められず、現場の状況を把握したうえで、迅速かつ適切な意思決定をすることが求められる場面で効果を発揮します。
OODAループを応用した事例
OODAループを応用した活用例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 営業活動における顧客対応
- マーケティングにおける市場調査
- 新商品開発における企画・開発
- 業務改善における課題解決
- トラブル対応
OODAループは、さまざまな場面で活用できる汎用性の高い手法です。
環境の変化が激しい現代において、OODAループを活用することで、より効果的な意思決定や対応が可能になるでしょう。
まとめ
PDCAサイクルは確かに一般的なアプローチですが、その柔軟性の低さや過度な文書化が問題となることもあります。
代わりになるアプローチとして、アジャイル開発、リーンシックスシグマ、OODAループ、PDRサイクルなどがあり、具体的な状況に応じて選択しなければなりません。
PDCAサイクルは、日本のビジネス文化に深く浸透しており、一部の状況では有用であることは間違いありませんが、KPI設定のためには、PDCAサイクル以外の方法も検討し、組織の成功に向けて最適な戦略を選択することが重要です。
組織やプロジェクトのニーズに合致したアプローチを取り入れ、今後の競争力をさらに強化しましょう。
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