ビジネスで数値化できない目標を管理する方法をわかりやすく解説!

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ビジネスの世界では、数値化できる目標が重視される傾向にありますが、すべての目標が数値で表せるわけではありません。
そのため日々の業務において、数値化しにくい目標の設定は避けて通れない課題です。

具体的な数値目標を設けることが難しい場合でも、適切な管理方法を用いれば、目標達成に向けた明確な道筋を描くことが可能です。

今回は、数値化できない目標を効果的に管理するための方法を、具体例を交えてわかりやすく解説します。

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数値化できない目標

数値化できなすぎて悟った女子。モデル:河村友歌

数値化できない目標には大きく分けて2種類あります。定性的目標、説明変数が多い目標です。

定性的目標

数値化できない目標は、その性質上測定が難しく、進捗の把握や評価が直感的に簡単に評価できるものではありませんが、これらの目標が組織や個人の成長において重要な役割を果たすことは間違いありません。

例えば、チームの士気向上や顧客からの信頼獲得などは、直接的な数値化が困難ですが長期的な成功に不可欠です。

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説明変数が多い目標

目標の数値化が簡単にできそうでも、目標に関連する変数が多いと数値化ができない場合があります。

説明変数が非線形に関係している、データに外れ値がある、変数間に強い相関関係がある(多重共感性を抱えている)、カテゴリカル変数の場合などです。

カテゴリカル変数とは、質的な属性を表す変数です。つまり、数値ではなくカテゴリー(グループ)に分類されたデータを表します。クロス集計分析やロジスティック回帰分析などにより分析が可能ですが、難しいものと言えるでしょう。

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数値化ができない目標の管理手法

かわいさが数値化できない女子。モデル:河村友歌

目標の明確化

数値化できない目標でも、その目標が何を意味するのか、何を達成したいのかを明確にすることが重要です。

目標を言語化し、関係者全員が共通の理解を持てるようにします。

進捗の質的評価

数値化できない目標の進捗を評価するには、質的な指標を用います。
例えば、フィードバックの内容、チーム内のコミュニケーションの改善、顧客からのポジティブなコメントなどが評価の材料となります。

定期的な評価

目標に対する進捗を定期的に見直し、目標の適切性や進行状況を評価します。この過程で、必要に応じて目標を調整することが可能です。

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フィードバックループの構築

関係者からのフィードバックを積極的に収集し、それを目標管理プロセスに反映させることで、継続的な改善を促します。

具体的な実施方法

リス

ケーススタディの活用

類似の状況や目標を持つ他の組織や個人の事例を研究し、その成功、失敗した実例や要因から学びます。

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アクションプランの作成

目標達成のための具体的な行動計画を作成します。
この計画には、目標に貢献すると考えられる具体的な行動や活動が含まれます。

メンタリングとコーチング

個人やチームのポテンシャルを最大限に引き出すために、メンタリングやコーチングを活用します。

経験豊富なメンターやコーチからの指導は、数値化できない目標の達成に向けたモチベーションやスキルの向上に寄与します。

この時の注意点としては、あくまで評価される側の意見をうまく聞き出すことができないと無意味どころか逆効果となってしまいます。

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継続的な自己評価

自身やチームの行動や成果を定期的に振り返り、自己評価を行います。
このプロセスを通じて、目標に対する理解を深め、必要な調整を行うことができます。

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定性的目標の具体例

数値化できない目標を掲げる大学卒業生。モデル:河村友歌

ここでは、数値化できない目標のうち定性的目標の具体例を紹介します。

組織文化の向上

組織文化は、企業の価値観、信念、行動様式を反映し、従業員の働きがいやチームワークに大きな影響を与えます。

具体的には、オープンなコミュニケーションの促進、イノベーションを奨励する文化の創造などが挙げられます。

ブランドイメージの強化

強いブランドイメージは、顧客の信頼とロイヤルティを獲得し、競合他社との差別化を図る上で重要です。ブランドの認知度向上、ポジティブな企業イメージの構築などがあります。

従業員満足度の向上

従業員の満足度は、生産性、創造性、チームの結束力に直接影響を及ぼします。働きがいのある環境の提供、キャリア成長の機会の提供、ワークライフバランスの実現が目標となります。

顧客満足度の向上

顧客満足度の向上は、リピート購入や口コミによる新規顧客獲得につながります。質の高い製品やサービスの提供、顧客サービスの向上が重要です。

イノベーションの促進

新しいアイデアや製品の開発を通じて、市場での競争優位性を確立することが目標です。従業員の創造性を刺激し、新しい技術や手法の採用を奨励します。

説明変数が多い目標の具体例

数学楽勝女子。モデル:河村友歌

一方で、説明変数が多い目標としては以下のようなものが挙げられますが、大体回帰分析を主に使用します。

多変量回帰分析

説明変数が非線形に関係している場合

最も主要な手法である非線形回帰分析は、線形回帰分析とは異なり、説明変数と目的変数の関係が非線形であると仮定した上で行う回帰分析です。

非線形回帰分析

非線形回帰分析には、様々なモデルがあります。

  • 多項式回帰:説明変数を多項式で表現するモデル
  • 指数回帰:説明変数を指数関数で表現するモデル
  • 対数回帰:目的変数を対数関数で表現するモデル

次に多く行われるのは、ロジスティック回帰分析という、目的変数が二値である場合に用いる回帰分析です。ロジスティック回帰分析は、説明変数と目的変数の関係をロジスティック関数で表現します。

ロジスティック回帰分析

3番目に、非線形主成分分析(NLPCA)という、主成分分析 (PCA)の非線形版のような方法を取ることもあります。
非線形主成分分析は、説明変数の非線形関係を考慮して、次元削減を行います。

オートエンコーダ学習プロセス
オートエンコーダ学習プロセス

4番目に、カーネル法という非線形なデータを高次元空間に写像し、その空間で線形回帰を行う手法もあります。カーネル法には、様々なカーネル関数があります。

ガウシアンRBF(放射基底関数)カーネル(Gaussian RBF Kernel)

5番目に、ニューラルネットワークは、人間の脳神経系を模倣した機械学習モデルです。ニューラルネットワークは、非線形な関係を学習することができるため汎用性があります。

データに外れ値がある場合

データに外れ値がある場合も、目的変数の数値化は困難になります。

最も簡単な手法としては、外れ値の除去があります。
外れ値は、データの分布を歪め、分析結果に大きな影響を与える可能性があるので、外れ値を除去することで、数値化の精度を向上させることができます。

また、外れ値をそのまま残す場合は、対数変換や平方根変換などの変換を行うことで、外れ値の影響を抑制することができます。

外れ値の影響を受けにくい回帰分析として、ロバスト回帰分析があります。
ロバスト回帰分析には、以下のようなモデルと特徴があります。

  • 最小二乗法:外れ値の影響を受けやすい
  • M-推定:外れ値の影響を受けにくい
  • L1正則化回帰:外れ値の影響を受けにくい
最小二乗法

他にもランダムフォレストは、複数の決定木を組み合わせて予測を行う機械学習モデルで、外れ値の影響を受けにくいモデルです。

変数間に強い相関関係がある場合

説明変数間に強い相関関係がある場合、目的変数の数値化は困難になります。解決策としては以下のようなものがあります。

主成分分析 (PCA)は、説明変数の次元削減を行う手法で、相関関係のある変数をまとめて新しい変数 (主成分) を作成することで、多重共線性の問題を回避することができます。

その後主成分回帰分析という、PCAで作成した主成分を説明変数として用いる回帰分析を行います。主成分回帰分析は、多重共線性の影響を受けにくく、解釈しやすい推定結果を得ることができます。

主要回帰分析

また、リッジ回帰では、回帰係数にペナルティ項を加えることで、多重共線性の影響を抑制する回帰分析も有効です。推定結果の安定性を向上させることができます。

一方で、ラッソ回帰は、回帰係数にL1正則化項を加えることで、多重共線性の影響を抑制し、同時にスパースな解 (多くの回帰係数が0になる解)を求める回帰分析です。ラッソ回帰は、重要な説明変数を抽出することができます。

ラッソ回帰

ラッソ回帰により、相関関係が強い変数の一方を除外することで、多重共線性の問題を回避することができます。ただし、変数削減を行う際には、情報が失われないように注意する必要があります。

カテゴリカル変数の場合

説明変数がカテゴリカル変数の場合の目的変数の数値化は以下のような手法で行うことができます。

最も使用されるダミー変数は、カテゴリカル変数を複数のダミー変数に変換する方法です。
ダミー変数化は、最も単純な数値化方法ですが、変数の数が多くなるというデメリットがあります。

順序尺度化は、カテゴリカル変数に順序をつける方法です。
例えば「満足度」というカテゴリカル変数であれば「非常に満足している」「満足している」「どちらでもない」「不満」「非常に不満」という5つの順序をつけることができますが、順序尺度化は、ダミー変数化よりも情報量が少ないというデメリットがあります。

主成分分析では、カテゴリカル変数を含む複数の変数をまとめて新しい変数 (主成分)を作成する方法です。
主成分分析は、変数の次元削減を行うだけでなく、カテゴリカル変数と数値変数をまとめて分析することができます。

ラベルエンコーディングは、カテゴリカル変数に数値を割り当てる方法です。ダミー変数化よりも計算量が少ないというメリットがあります。

ワンホットエンコーディングは、カテゴリカル変数をダミー変数化し、さらに各ダミー変数を1列のベクトルとして表現する方法です。
ワンホットエンコーディングは、機械学習モデルで扱いやすい形式に変換することができます。

4つの例を説明しましたが、それぞれどの方法を選択するかは、データの性質や分析の目的に依存します。

それぞれの方法のメリットとデメリットをよく理解した上で、適切な方法を選択することが重要です。

まとめ

数値化できない目標の管理は、ビジネスの成功に不可欠です。

これらの目標は、組織の文化や価値観に深く関連していたり、需要の多様化により変数の増加などの影響を防ぐことができ、長期的な成功に繋がります。

今回紹介した手法を通じて、数値化できない目標を効果的に管理し、ビジネスの成功を実現しましょう。

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